「FXで損失が出てしまったけど、確定申告をしていないか忘れてしまった…」という疑問に答えます。
FXは外国為替証拠金取引といって、証拠金を預けて通貨の売買を行う金融商品です。FXで利益が出た場合は、確定申告をして税金を納める必要がありますが、逆に損失が出た場合はどうすればいいのでしょうか。
実は、FXで損失が出た場合も、確定申告をすることによって、税金の節約や還付が可能な場合があります。しかし、多くの人は、損失を出したことを忘れてしまったり、確定申告の方法やメリットを知らなかったりして、チャンスを逃してしまっているのです。
この記事では、FXで損失が出た場合の確定申告の必要性や方法、メリットについて詳しく解説します。また、今後の税金対策や節税方法も紹介します。
- FXで損失が出てしまった方
- FXで損失を確定申告する方法やメリットを知りたい方
- FXで節税する方法やコツを知りたい方
FXで損失が出た場合の確定申告の必要性と方法
FX(外国為替証拠金取引)は、少ない資金で大きな取引ができ、誰でも手軽に始められる金融商品です。
しかし、FXで利益が出た場合は確定申告が必要になることは知られていますが、損失が出た場合も確定申告をすることで税金の節約や還付が可能な場合があります。
本記事では、FXで損失が出た場合に確定申告が必要なケースと、確定申告をするメリットと方法について解説します。
FXで損失が出た場合の確定申告の必要性
FXで損失が出た場合に確定申告をする必要性について説明します。
確定申告をする必要性は、以下の2点に分けられます。
- 確定申告が必要な場合
- 確定申告が不要でもメリットがある場合
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
確定申告が必要な場合
FXで損失が出た場合でも、以下の条件に該当する場合は、原則として確定申告をする必要があります。
- 年収が2,000万円を超えている場合
- FXで年間20万円以上の所得を得ている場合
- 本業とFXによる所得の合計が20万円以上の場合
- 扶養に入っておりFXによる所得が38万円以上の場合
これらの条件に該当する場合は、FX取引で得た利益や損失を所得税法に基づいて申告しなければなりません。
期限内に提出しないと遅延損害金や過少申告加算税などのペナルティが課される可能性があるため注意しましょう。
確定申告が不要でもメリットがある場合
FXで損失が出た場合でも、上記の条件に該当しない場合は、確定申告は不要です。
しかし、損益通算や繰越控除という節税方法を利用するためには、確定申告をする必要があります。
これらの方法については後述します。
FXで損失が出た場合の確定申告のメリット
FXで損失が出た場合に確定申告をするメリットについて説明します。確定申告をするメリットは、以下の2点に分けられます。
- 繰越控除で最大3年まで損失を繰越せる
- 損益通算で複数のFX会社での取引を合算できる
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
繰越控除で最大3年まで損失を繰越せる
繰越控除とは、FXで損失をだした時に確定申告をしておくことで、利益がでた年の税金をマイナスの年の損失で軽減できる仕組みです。例えば、2018年は25万円の損失をだし、翌年は40万円の利益になったと仮定します(表1)。
その場合、繰越控除を行いますと、先物取引に関連する雑所得の金額は15万円の利益が生じたことになります(表1)。
このように、繰越控除を利用することで、翌年以降に利益が出た場合に損失を差し引くことができます。
繰越控除は、損失が発生した年から3年間有効です。
つまり、損失が発生した年から3年以内に利益が出れば、損失を差し引くことができます。
例えば、2018年に100万円の損失をだした場合、2021年までに利益が出れば、その利益から100万円を差し引くことができます。
繰越控除の適用を受けるには、確定申告をする必要があります。確定申告をしないと、損失が発生した年の所得はゼロとみなされてしまい、繰越控除の対象になりません。
また、繰越控除を受けるためには、FX取引に関連する雑所得のみでなく、他の先物取引に関連する雑所得も申告する必要があります。
年度 | FX取引の損益 | 他の先物取引の損益 | 損益通算の結果 | 繰越控除の残額 |
---|---|---|---|---|
2018年 | -25万円 | 0円 | -25万円 | -25万円 |
2019年 | +40万円 | -10万円 | +30万円 | -5万円 |
2020年 | -15万円 | +5万円 | -10万円 | -15万円 |
2021年 | +50万円 | 0円 | +50万円 | 0円 |
この表から、2018年に25万円の損失が発生したことがわかります。
この損失は繰越控除の対象となります。
2019年には30万円の利益が発生しましたが、繰越控除を利用して25万円を差し引くことができます。
そのため、繰越控除の残額は5万円となります。
2020年には10万円の損失が発生しましたが、繰越控除の残額を加算することができます。
そのため、繰越控除の残額は15万円となります。
2021年には50万円の利益が発生しましたが、繰越控除を利用して15万円を差し引くことができます。
そのため、繰越控除の残額はゼロとなります。
このように、繰越控除を利用することで、損失を出した年から3年間に利益が出た場合に税金を軽減することができます。
損益通算で複数のFX会社での取引を合算できる
損益通算とは、FX取引および他の先物取引との損益を計算し、損失が生じた場合、他の先物取引に関連する雑所得との相殺が可能な方法です。他の先物取引とは、現物先物取引や商品指数先物取引などです。
例えば、1年間のFX取引で50万円の利益が出て、他の先物取引で80万円の損失が発生したとしましょう(表2)。
その場合、損益通算を行いますと、先物取引に関連する雑所得金額は30万円の損失が生じたことになります(表2)。
このように、損益通算を利用することで、FX取引だけではなく他の先物取引でも発生した損益を合算することができます。
また、損益通算は複数のFX会社で取引している場合にも適用されます。
つまり、FX会社Aで利益が出てもFX会社Bで損失が出ていれば、その差額だけが課税対象となります。
損益通算を利用するためには、確定申告をする必要があります。確定申告をしないと、FX会社ごとや先物取引ごとに別々に計算されてしまい、相殺できません。
また、損益通算を利用するためには、すべてのFX会社から送られてくる源泉徴収票や取引報告書を用意する必要があります。
FX会社 | FX取引の損益 | 他の先物取引の損益 | 損益通算の結果 |
---|---|---|---|
A | +50万円 | -80万円 | -30万円 |
B | -20万円 | +10万円 | -10万円 |
C | +30万円 | 0円 | +30万円 |
合計 | +60万円 | -70万円 | -10万円 |
この表から、FX取引と他の先物取引の合計では10万円の損失が生じていることがわかります。
したがって、確定申告をすることで、この10万円分の損失を繰越控除や他の所得との損益通算に利用することができます。
FXで損失が出た場合の確定申告の方法
FXで損失が出た場合に確定申告をする方法について解説します。確定申告をするには、以下の手順を踏みます。
- 必要な書類や資料を準備する
- 所得金額や納税額を計算する
- 確定申告書を作成する
- 確定申告書を提出する
それぞれの手順について詳しく見ていきましょう。
必要な書類や資料を準備する
FXで確定申告をするために必要な書類は、源泉徴収票、取引報告書、必要経費の証拠資料、マイナンバーカードや通知カード、印鑑などです。
それぞれの書類の役割や注意点について説明します。
源泉徴収票
源泉徴収票は、FX会社がFX取引で得た利益に対して源泉徴収した税金の額や所得の額などが記載されている書類です。FX会社は、年間で20万円以上の利益が出た場合には、利益の20.315%(所得税15.315%、住民税5%)を源泉徴収して国税庁に納めます。源泉徴収票は、確定申告書の添付資料として必要です。
取引報告書
取引報告書は、FX会社がFX取引で発生した為替差益やスワップポイントなどの詳細な内容を記載した書類です。取引報告書は、FX取引の所得金額や必要経費の計算に必要です。取引報告書は、FX会社から送られてくるか、ウェブサイトからダウンロードできます。
必要経費の証拠資料
必要経費とは、FX取引に関連して発生した支出のことで、インターネット料金やセミナー費用などが該当します。必要経費は、FX取引の所得から差し引くことができるため、節税に有効です。必要経費を申告する場合は、領収書や明細書などの証拠資料を用意しておく必要があります。
マイナンバーカードや通知カード
マイナンバーカードや通知カードは、確定申告時に本人確認のために必要です。マイナンバーカードは、e-Tax(電子申告・納税システム)で確定申告を行う場合にも必要です。マイナンバーカードや通知カードを紛失した場合は、市区町村役場で再発行を申請することができます。
印鑑
印鑑は、確定申告書に押印するために必要です。印鑑は、認印でも可ですが、実印の方が安全です。実印を使用する場合は、印鑑登録証明書も添付する必要があります。
所得金額や納税額を計算する
FXで確定申告をするためには、所得金額や納税額を計算する必要があります。所得金額や納税額の計算は、以下の式に従って行います。
所得金額の計算式
所得金額 = 為替差益 + スワップポイント - 必要経費
所得金額とは、FX取引で発生した収入から支出を差し引いた金額のことです。所得金額には、以下の要素が含まれます。
- 為替差益とは、FX取引で為替レートの変動によって発生した利益や損失のことです。為替差益は、取引報告書に記載されています。
- スワップポイントとは、FX取引で異なる国の通貨を交換する際に発生する金利差のことです。スワップポイントは、取引報告書に記載されています。
- 必要経費とは、FX取引に関連して発生した支出のことで、インターネット料金やセミナー費用などが該当します。必要経費は、領収書や明細書などの証拠資料を用意しておく必要があります。
納税額の計算式
納税額 = 所得金額 × 20.315% - 源泉徴収税額
納税額とは、FX取引で発生した所得に対して支払うべき税金の額のことです。納税額には、以下の要素が含まれます。
- 所得金額は、前述の通りです。
- 源泉徴収税額とは、FX会社がFX取引で得た利益に対して源泉徴収した税金の額のことです。源泉徴収税額は、源泉徴収票に記載されています。
例として、以下のデータがある場合の所得金額や納税額の計算をしてみましょう。
為替差益:-100万円
スワップポイント:10万円
必要経費:20万円
源泉徴収税額:0円
所得金額の計算
所得金額 = 為替差益 + スワップポイント - 必要経費 = -100万円 + 10万円 - 20万円 = -110万円
納税額の計算
納税額 = 所得金額 × 20.315% - 源泉徴収税額 = -110万円 × 20.315% - 0円 = -223,465円
この場合、所得金額がマイナスになっているため、納税額もマイナスになります。これは、確定申告をすることで源泉徴収された税金が還付されることを意味します。また、損失が出た場合は、損益通算や繰越控除を利用することで節税につなげることができます。
確定申告書を作成する
FXで確定申告をするためには、確定申告書を作成する必要があります。確定申告書は、以下の2種類から選択して作成します。
青色申告決算書(一般用)
青色申告決算書(一般用)は、青色申告を行っている場合に使用します。青色申告とは、国税庁が定めた一定の条件を満たす場合に認められる申告方法で、特別控除や簡易帳簿の利用などのメリットがあります。青色申告を行うには、事前に国税庁に届出をする必要があります。
確定申告書A(雑所得)
確定申告書A(雑所得)は、青色申告を行っていない場合に使用します。確定申告書A(雑所得)は、FX取引に関連する雑所得のみを申告する場合に使用します。他の所得がある場合は、確定申告書B(給与所得等)や確定申告書C(事業所得等)などを併用する必要があります。
確定申告書は、紙で作成する方法と、e-Tax(電子申告・納税システム)で作成する方法があります。紙で作成する場合は、国税庁のホームページからダウンロードしたり、税務署やコンビニエンスストアで入手したりできます。e-Taxで作成する場合は、インターネット上で入力して提出できます。
【関連記事】
FXの確定申告書の書き方と提出方法【青色申告決算書・確定申告書A】
確定申告書を提出する
以下の文章を制約条件に従って直しました。
FXで確定申告をするためには、確定申告書を提出する必要があります。確定申告書の提出方法は、以下の3種類から選択できます。
税務署へ持参する
税務署へ持参する場合は、確定申告書や添付資料を印刷して持参し、窓口で受理されたことを証明する受付票をもらいます。税務署へ持参する場合は、混雑が予想されるため、早めに行くことがおすすめです。
郵送する
郵送する場合は、確定申告書や添付資料を印刷して封筒に入れて郵送し、受理されたことを証明する受付票が返送されるのを待ちます。郵送する場合は、郵便事故や遅延などのリスクがあるため、余裕をもって送ることがおすすめです。
e-Taxで提出する
e-Taxで提出する場合は、インターネット上で入力した確定申告書や添付資料を送信し、受理されたことを証明する受付番号が表示されるのを確認します。e-Taxで提出する場合は、マイナンバーカードやICカードリーダーなどの準備が必要です。
確定申告書の提出期限は、原則として2月16日から3月15日までです。ただし、2022年度分の確定申告では、新型コロナウイルス感染症対策として期限が延長されており、4月15日までとなっています。期限内に提出しないと遅延損害金や過少申告加算税などのペナルティが課される可能性があるため注意しましょう。
以上で、FXで損失が出た場合の確定申告についての解説は終わりです。
FXで損失が出た場合でも、確定申告をすることで税金の節約や還付が可能な場合があります。確定申告の方法やメリットを理解して、チャンスを逃さないようにしましょう。
Q&A
FXで損失が出た場合に関するよくある質問と回答を紹介します。
FXで損失が出たら源泉徴収されるか?
FXで損失が出た場合、源泉徴収されることはありません。源泉徴収とは、FX会社がFX取引で得た利益に対して税金を先に徴収して国税庁に納める仕組みです。FX会社は、年間で20万円以上の利益が出た場合にのみ、利益の20.315%(所得税15.315%、住民税5%)を源泉徴収します。したがって、損失が出た場合は源泉徴収の対象になりません。
ただし、FXで損失が出た場合でも、確定申告をすることで税金の節税や還付が可能な場合があります。例えば、他の所得との損益通算や繰越控除を利用することで、所得税や住民税を軽減できる場合があります。
FXで損失が出たら扶養から外れるか?
FXで損失が出た場合、扶養から外れることはありません。扶養とは、配偶者や親族などの生活費を支えることを意味します。扶養に関する税制上のメリットは、配偶者控除や扶養控除などです。これらの控除を受けるためには、一定の条件を満たす必要があります。
配偶者控除
配偶者控除を受けるためには、配偶者の年間所得が103万円以下であることが必要です。配偶者控除の額は38万円です。
扶養控除
扶養控除を受けるためには、扶養される人(配偶者以外)の年間所得が48万円以下であることが必要です。扶養控除の額は63万円(1人目)から38万円(2人目以降)です。
したがって、FXで損失が出た場合でも、年間所得が上記の金額以下であれば、扶養から外れることはありません。逆に言えば、FXで利益が出て年間所得が上記の金額を超えた場合は、扶養から外れてしまう可能性があります。
FXで損失が出たら住民税はどうなるか?
FXで損失が出た場合でも、住民税は発生します。住民税とは、前年度の所得に対して課される地方税です。住民税は所得割と均等割からなります。それぞれの内容や計算方法について説明します。
所得割
所得割は所得に応じて課される税金で、国内FXの場合は5%、海外FXの場合は10%の税率が適用されます。所得割の計算式は以下の通りです。
所得割 = 所得金額 × 税率
所得金額とは、FX取引で発生した収入から支出を差し引いた金額のことです。税率とは、国内FXか海外FXかによって異なります。
均等割
均等割は所得に関係なく課される税金で、標準税額は5,000円(市町村民税3,500円、道府県民税1,500円)です。均等割の計算式は以下の通りです。
均等割 = 標準税額 × 人数
標準税額とは、市町村民税と道府県民税を合わせた金額のことです。人数とは、扶養される人を含む本人を1人とした世帯員の数のことです。
住民税は、確定申告によって所得が確定した後に、住所地の市区町村から納付書が送られてきます。納付書は一括用と分割用(4期分)が同封されていることがあります。分割の場合、それぞれの納期限は第1期が6月末、第2期が8月末、第3期が10月末、第4期が翌年1月末です。一括納付の納期限は6月末となっています。
FXで損失が出た場合でも、住民税を支払わなければなりませんが、損失を申告することで住民税を下げることができる場合があります。例えば、他の所得との損益通算や繰越控除を利用することで、所得割の額を減らすことができます。
まとめ
この記事では、FXで損失が出た場合の確定申告や住民税について解説しました。FXで損失が出た場合でも、以下の点に注意してください。
記事のまとめ
- 源泉徴収されないが、確定申告をすることで節税や還付が可能な場合がある
- 扶養から外れることはないが、利益が出て年間所得が一定額を超えると扶養から外れる可能性がある
- 住民税は発生するが、損失を申告することで住民税を下げることができる場合がある
FXで損失を出しても諦めずに、確定申告や住民税の申告方法やメリットを理解して、チャンスを逃さないようにしましょう。